2006年10月29日日曜日

フェアウェル

10月も終わりを迎えた。長く勤めた会社を辞め、新たな人生の模索を始めてから既に半年以上の月日が流れた。9月にそろそろこのブログの役割も終わりに近づいた、と感じたが、いよいよこの投稿をラストメッセージにしようと思う。

最後に素晴らしい本との出会いについて触れておきたい。

イマキュレー・イリバギザ著、「生かされて。」(PHP研究所)

10年程前のルワンダでの大量虐殺の中で、愛する家族や友人達を皆殺しにされながらも奇跡的に生き延びた著者による壮絶な物語である。原著も邦訳版もまだ出版されたばかりの新刊であるが、海外駐在している前の会社での同期入社の親友がいち早く読み終えてプレゼントしてくれた。彼には、このような素晴らしい本との出会いをタイミングよく演出してくれて感謝の言葉もない。

たった一言でも勝手な感想を述べること自体、この本の崇高なメッセージを汚すように思われて憚られるのだが、これほどまでの過酷な運命を強いられながらも、その運命から逃げ出すことなく、信仰の力を借りて数々の奇跡を呼び寄せながら乗り越えていく著者の強さには、ただただ圧倒されると同時に、その生き方に強く魂を揺さぶられずにはおれない。

私自身、この半年あまりの間に人間の弱さと強さに向き合い、生きることの本質的な意味ということを自分なりに模索してきたが、この著作は、まさに何の救いもないような絶望的な環境の中にあっても、ひとりのか弱い人間が究極の強さを発揮し得る、ということを垣間見せてくれた。「信仰」と「許し」と「慈悲」の本でもある。

今の世の中は「憎しみ」で満ち満ちている。テレビをつければ、いじめや殺人の話題で連日溢れ返っている。街に出れば、先を急ぐ人達で通りや電車の中はいつも殺気立っている。会社の中では足の引っ張り合い、嫉妬、ねたみ、権力闘争、リストラ、、、暗くおどろおどろしい怨念がいたる所で渦巻いている。ネットの中も、匿名性を隠れ蓑にした卑劣な誹謗中傷や個人攻撃が野放し状態。5年前のアメリカの9・11同時多発テロにしても、その後のアフガニスタンやイラクへのアメリカの「復讐」は事態を悪化させこそすれ、決して好転させてはいない。こういう負の連鎖を我々はどこかで本当に断ち切らないことには会社の繁栄もなければ世の中の平和もなく、個人の幸せもない。自分を裏切ったり、陥れたり、辱めたり、傷つけたり、追い込んだりした嫌な相手を「許す」という行為は簡単ではない。それどころか常人には到底不可能にしか思えない。しかしながら、最愛の肉親や友人達を殺戮した当事者でさえも、究極の苦悶と葛藤の挙句、心から許すことの出来る境地に達し、「憎しみの連鎖」を断ち切って幸福を手に入れたイマキュレーのような人物もいる、という事実は我々に新鮮な勇気を与えてくれる。

このブログの最初の投稿で「宗像大社」のことを書いたが、先日、彼の地を再び訪れた。また、前後して「出雲」の地も訪れる機会があった。いつか「内観ということ」の中でも少し触れたし、屋久島の縄文杉の前でも実感したことだが、宗像、出雲、屋久島のような神話の世界やパワースポットを巡って強く感じることは、やはり我々の存在は何らかの「神秘の力」に支えられている、ということである。生きて行くにあたってはいかなる奢りや勘違いも禁物であると思う。まさに、「生かされている」という謙虚な心境を忘れずに自分の運命を引き続き楽しんで行きたいと思う。

最後に、あらためて本ブログの読者の皆さん、またコメントやメールを通じて激励してくださったすべての皆さんに心から感謝の気持ちを捧げたいと思います。ありがとうございました。なお、このブログへの新たな投稿はこれを以って完了とさせていただきますが、このまま閉鎖することはせずに公開を続けさせていただきます。そして、また皆さんにあらためてお目に掛かる準備が整った時にはここにその旨アナウンスをさせていただきますのでこれからも時々チェックしていただれば幸いです。

短い間ではありましたがありがとうございました。


1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

本当にこのブログが終わってしまうことを、とても寂しく感じています。MasterMind0710氏の新たな出発を悦ばしく思うけれど、お別れはやはり残念です。

ご紹介の本、アフィリエイトに貢献(笑)しつつ即買いしてしまいました。翻訳をされた方が、父の同級生で初恋の人だったのも奇遇…!

平然と自然の恵みを枯渇させ、自らの子孫を窮地に追い込みつつ生きていくような、今の国際社会のあり方に「憎しみの連鎖」の根源を見て取れる気がしてなりません。
「許す」という『愛のあり方』で人生を歩むことに、決して躊躇してはならないと思っています。自分さえ良ければいいという人と分かち合っていくのは苦労だし、時にくじけそうにもなるけれど…許しの無いところに、可能性は広がっていきませんから。

人ひとりの可能性が、いかに計り知れないものなのか…たったひとりの「許し」がどれだけの他の人々の可能性を拓くのかと想いを馳せた時、私も、神とか神秘といった力を感じずにはいられません。

このブログを時をさかのぼりながら改めて読み返し、MasterMind0710氏の「しなやかさ」を感じずにはいられませんでした。書いてあることのスケールがだんだん大きく!なってきたように思われ、氏が自身と向き合った時間の「濃密さ」と「真摯」なあり方には平伏します。確かに歩んでこられたことと、少しでもその過程でご一緒できたことに、感謝申し上げます…とにかく、なんか「まじめに楽しかった☆」です。
次にお会いできる時は、さらに楽しく一生懸命になれるようなステージとなりますよう、趣向を凝らして、Openしてくださいね~!!