2006年5月4日木曜日

さあ、5月だぁ

最近読んだ本の中で、以前にも触れた藤原正彦氏の「国家の品格」と梅田望夫氏の「ウェブ進化論」は秀逸であると思う。自分自身、長年の会社生活の中で、特に退社直前の数年に渡って「何かが違う、何かがおかしい、」ともやもやし続けてきたことに関して、胸のつかえが一気に降りたような気持ちにさせてくれた著作である。たまたまこれらがほぼ時を同じくして出版され、それらをシンクロさせて読むことが出来たことは個人的には幸運であったと感じる。

西欧流の競争原理や個人主義に過剰に毒され、武士道精神を失って「勝つためには手段を選ばず」的な志の低い企業行為の数々、時代感覚をなくして世の中のメガトレンドに疎く、プライドやビジョンや技術を軽視した保守的な体質、数々の実績を上げた功労者や自らリスクを取るチャレンジ魂を極端に粗末に扱い、しかもそれをなんとも思わない無神経な人々の横行、新しい企業価値を生み出すことに賭ける腹の据わった度胸と忍耐力の欠如、見苦しい嫉妬と足の引っ張り合いやモラルハザードが日常化した結果、内向きに消費される無駄なマイナスエネルギーの極大化、、、私が辞めた会社の辞める直前の状況は、まさに目を覆うばかりの惨憺たるものであったが、そういった惨状の根底に横たわる本質的な問題の数々を自分なりに整理する上で、両著には共感、賛同出来る多くの示唆がありとても役に立った。

当時の私にとって、選択肢は二つ。一つ目は、大企業としてのブランドは一流でも、肥大化して中身は三流化した会社に踏み止まって、再び一流企業として世の中にポジティブな影響を与え続ける会社としての復活に尽力する。二つ目は、見切りを付けて辞め、別の形で自分の価値観の正当性を証明する生き方をする。私は、まず一つ目の選択肢を選び、存分に闘って来たつもりだが、残念ながら、最終的には、「もう、これ以上はどうにもならない」という限界点を超えた、と判断し、二つ目の選択肢である「思い切って辞める」という行動を取った。

藤原氏は言う。「真のエリートには二つの条件があります。(中略)そうした教養を背景として、庶民とは比較にもならないような圧倒的な大局観や総合判断力を持っていること。これが第一条件です。第二条件は、「いざ」となれば国家、国民のために喜んで命を捨てる気概があることです。この真のエリートが、いま日本からいなくなってしまいました」「はっきり言えば、一万人の殺人犯がいても、先進国家は何ともない。しかし、一万人の真のエリートがいなかったら潰れます」。藤原氏の国家論は企業論にもそのまま当てはまると思う。

梅田氏は言う。「日本の大企業経営者、官僚、マスメディア幹部。いわゆるエスタブリッシュメント層の中枢に坐る、私よりも年上の人たちの大半が、組織を辞めたという個人的経験を全く持たないのである。そのことが日本の将来デザインに大きな歪みをもたらしてはいないか」、「これから日本は、大組織中心の高度成長型モデルではない新しい社会構造に変化していき、私たち一人一人は、過去とは全く違う「個と組織との関係」を模索しなければならない。そういうことを感知するセンスのいい若い人たちに、「組織を一度も辞めたことのない」エスタブリッシュメント層の言葉は、むなしく響くばかりなのではないだろうか」。

藤原氏の言に心を強くし、梅田氏の言に心を励まされて、自分にとっての新しい生き方の模索が始まっている。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

私も最近両方の本を読んだばかりです。藤原先生の本は極論的なところもあるとはいえ、堂々と持論を展開する感じに感服しますし、多くの日本人に自信を与える内容だと思います。

梅田さんの本は本当に面白かったです。内容的にはジョン・バテルの「The Search」をすでに読んでいたので、知識的には新しい発見は少なかったですが(ザ・サーチはまだでしたらお勧めです)、彼の次の世代への期待が非常にgenuineで感動しました。

両方とも勇気付けられる内容ですね。Web進化論は会社を辞める時に間接的に勇気付けられた覚えがあります。

MasterMind0710 さんのコメント...

Kenさんへ

コメントありがとうございます。「ザ・サーチ」さっそく紹介させていただくと共に、まだ読んでいなかったので早速取り寄せて読んでみます。Kenさんも会社を辞められたのですね。今後ともよろしくお願いします。

匿名 さんのコメント...

ザ・サーチのご感想をぜひお聞かせていただければと思います。検索という分野の今後の世の中へのインパクトを説明した、インサイトに富む内容だと私は思いました。
辞めたのは同じ会社です^^)